【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)は23日、ブリュッセルで欧州に流入するシリアなどからの難民を巡る臨時の非公式首脳会議を開く。22日に開いた臨時の内相・法相理事会で12万人の難民受け入れを加盟国が自主的に分担することを決めたのを受け、難民対策への財政支援や国境管理の強化などの協議に軸足を移す。「欧州国境沿岸警備隊」の創設や、難民対策への17億ユーロ(約2300億円)の資金拠出などが議題になる。
ブリュッセルで開かれる非公式首脳会議に到着した英国のキャメロン首相(右)=ロイター
EUのトゥスク大統領は23日、首脳会議に先立って記者団に「最も重要な問題は、EUと域外との境のコントロールをどう取り戻すかだ」と強調した。シリア情勢などを考慮すれば、さらに数百万人の難民らが欧州に押し寄せる可能性があるとの危機感を示し、各国首脳らに結束を求めた。
EUの執行機関、欧州委員会は23日、首脳会議に先立ち、今後半年間で優先して取り組む政策プランをまとめた。域外との境の警備を強化するため欧州国境沿岸警備隊の創設に向けた提案を12月に示すほか、加盟国や国際機関などの難民支援策を支えるため、新たに17億ユーロの資金を拠出する。
欧州入りするシリア難民らが経由するトルコに10億ユーロを財政支援する措置も盛り込んだ。
23日の首脳会議では欧州委が提示した政策プランのほかシリア情勢の安定に向けた外交戦略も協議する。難民割り当てを巡る中東欧諸国との亀裂の行方も焦点となる。EUが22日開いた臨時の内相・法相理事会では、ハンガリーやチェコなど中東欧4カ国が反対するなか、多数決で12万人の難民受け入れの分担を決めた。
こうした重要な課題でEUが多数決という手段を選ぶのは異例。チェコのホバネツ内相が理事会後、ツイッターで「常識がきょう失われた」と不満をあらわにするなど中東欧側に反発が広がる。
12万人の難民のうち6万6千人は今後1年間で受け入れる。国別で最も多いのはドイツの1万7036人。反対した中東欧諸国も受け入れ分担への参加を求められる。残る5万4千人は1年後に改めて各国に割り振る。EUは当初、国ごとに受け入れ枠の達成を義務づけることを目指したが、結局は各国の自主的な受け入れにとどめた。
EUは6月の首脳会議で4万人の受け入れ分担を正式合意した。22日に合意した12万人と合わせて16万人のシリア難民らをEU域内に定住者として受け入れる。先行して決めた4万人の分担も今回と同様に自主申告を前提とする受け入れの目標人数だった。だが、これまでに各国が申告した受け入れ人数は目標の計4万人に届いていない。