八回裏1死三塁から2者連続三振を奪いガッツポーズする竹田祐君=19日、阪神甲子園球場、角野貴之撮影
(19日、選抜高校野球 履正社12―5日大三)
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偉大な先輩に少しだけ近づけたかも。19日の第2試合で日大三(東京)を12―5で退けた履正社(大阪)のエース竹田祐君(3年)は試合後、昨秋のドラフト1位でヤクルトに入団した左腕寺島成輝投手(18)に触れ、「同じグラウンドで投げられた。うれしい」とはにかんだ。
九回2死、一、二塁。相手打者を右飛に打ち取ると、マウンドで両手で大きくガッツポーズした。
小学2年で野球を始めて約7年、投手としてマウンドに立ち続けた。だが、甲子園を目指して進学した履正社には、1学年上に寺島投手がいた。1年秋、岡田龍生監督に打撃技術と強肩を見込まれ一度は野手になった。ショートの守備位置からは、寺島投手の背中が見えた。ゆったりとしたフォームから150キロに迫る直球を投げ込む姿に見とれてしまうほどだった。
2年の春、冬場のトレーニングで球速の上がった直球が岡田監督の目に留まり、再び投手に挑戦することになった。
「寺島さんのような勝てる投手になりたい」。先輩から何でも吸収しようとした。ボールの芯をずらして、3本の指で握る寺島流スライダーは、思いっきり腕を振ると、横に滑るような変化をすると教わった。
昨夏の甲子園。履正社は3回戦で敗退した。その夜、宿舎で寺島投手からオレンジ色のゴムボールを渡された。親指、人さし指、中指でつまんで手首を動かし、指の筋肉を鍛える寺島投手愛用の器具だ。
黒色の油性フェルトペンで「1代目 寺島成輝」と書かれていた。「お前も名前を書いて、歴代のエースに引き継いでほしい」と言われた。以降、毎日ボールをつまんで200回手首を動かした。背番号「1」で臨んだ選抜も宿舎にボールを持参した。
この日は序盤に相手打線に捕まり、長打を浴びて先取される展開に。「吐きそうなほど緊張した」が、味方打線の援護を受け、自己最高となる球数174を投げて完投した。
4万5千人の大観衆。甲子園のマウンドに立ちふと思った。「実は寺島さんも緊張したんじゃないか」。今回は、気持ちが入りすぎて、ボール先行の投球をしてしまったが、「次の試合は1球1球集中して、相手打者としっかり勝負したい」と話した。(半田尚子)