大阪市東住吉区で1995年、女児(当時11)が死亡した火災で、殺人や現住建造物等放火などの罪で無期懲役の判決が確定した元被告2人の再審開始決定に対する即時抗告審で、大阪高裁(米山正明裁判長)は23日、再審を開始するかどうか決定を出す。検察側と弁護側双方の再現実験で元被告の自白調書通りの犯行は不可能と確認されており、自然発火の可能性の有無が最大の争点だ。
2人は女児の母親の青木恵子元被告(51)と当時内縁の夫だった朴龍晧元被告(49)。
2人は保険金目的で自宅車庫にガソリンをまいて放火し、入浴中の長女を殺害したとして殺人や現住建造物等放火、詐欺未遂の罪で逮捕・起訴された。
2人は公判で一貫して無罪を主張したものの、大阪地裁は99年「車からガソリン約7リットルを抜いて車庫にまきライターで火をつけた」との朴元被告の捜査段階の自白調書を根拠に無期懲役とした。二審も支持、2006年に最高裁で確定した。
弁護側は09年に再審請求した後、朴元被告の自白調書と同じ方法で犯行を再現する実験を実施。すると7リットルのガソリンをまききる前に風呂釜の種火に引火してあっという間に燃え広がった。
12年3月の大阪地裁決定は実験結果を重視。朴元被告がやけどを負っていないことなどから「捜査段階での自白は極めて不自然・不合理で信用できない。車から漏れたガソリンに引火した可能性が否定できない」として2人の再審開始を認める決定を出したが、検察側が即時抗告した。
即時抗告審では検察側も再現実験を実施したが、弁護側の実験とほぼ同様の結果になった。
そこで検察側は自然発火の可能性がないことを確かめるため別の再現実験も実施。車庫に止まっていた車から漏れる可能性がある最大量約33ミリリットルのガソリンでは事件と同規模の火災は発生しないとして「放火しかあり得ない。放火したという自白の核心は否定されない」と主張している。
一方、弁護側は専門家の鑑定結果などから「夏場の温度上昇で満タンのタンク内の圧力が高まるなどして数百ミリリットル単位でガソリンが漏れ、火災になった」とし、自然発火したと主張している。