三井物産は26日、ブラジルの国営石油会社ペトロブラス傘下のガス会社ガスペトロの株式の49%を670億円で取得すると正式発表した。今回の株式取得でガス配給市場の半分前後のシェアを握り、同国ではガス配給会社として最大手となる。ブラジルは資源安の影響などで足元では経済が低迷しているが、中長期的には成長の余地が大きいとして投資に踏み切る。
三井物産は2006年にブラジルのガス配給事業に参入、すでに8州で展開している。今回のガスペトロへの出資で合計で19州まで範囲が広がる。ガスの1日当たりの取扱量は3千万立方メートルで、同国の半分のシェアを占めることになる。
資源安や政権を巻き込んだ汚職疑惑で経営が揺らぐペトロブラスの財務立て直しの一環として今回、ガスペトロの株式は「売り」に出された。中国のガス会社なども入札に参加したが、三井物産は「これまで築いてきたネットワークを侵食されることは見過ごせない」(幹部)として、積極的にアプローチした。
最近の資源価格の低迷は業績の下振れ要素となっている。しかし、今回の買収は「資源・エネルギー価格の低迷とは関係なく、ガス契約者から安定的に収益が得られる」(同)として投資に踏み切った。
三井物産はブラジルでは鉄鉱石世界最大手のヴァーレの持ち株会社に15%出資するなど、資源や穀物事業などで同国にこれまで1兆円近く投融資している。昨年もヴァーレの一般貨物事業を手掛ける鉄道会社VLIにも20%出資している。
同国のインフラ整備を支援し、「ボトルネックとなっている供給網の整備で国内事業以外にも、資源や穀物分野の輸出競争力を底上げできる」(安永竜夫社長)との読みもある。