北海道旅客鉄道(JR北海道)は6日、利用が少ない赤字10線区の収支状況を初めて公表した。2014年度の数値で、鉄道事業の赤字の約2割を占める。15年4~9月期の連結決算は本業のもうけを示す営業損益が105億円の赤字と前年同期(99億円の赤字)から赤字幅が拡大。人口が減るなか、地域の実情に沿った道内の交通体系づくりの議論が同社の経営体質改善にも急務となる。
すでに地元自治体と廃線協議を進めている留萌線留萌―増毛間は、14年度の1日の1キロメートル当たりの平均輸送人員(輸送密度)が39人で、営業損益は2億円の赤字。100円稼ぐためにかかる費用(営業係数)は4161円に上る。冬の除雪コストがかさむうえ、特急列車が通るための整備が必要な宗谷線名寄―稚内間なども赤字が大きい。
高波で被災し一部区間の運休が続く日高線苫小牧―様似間は代行バスなどの経費もかさむ。10線区の営業損益は合計で86億円の赤字。記者会見した小山俊幸常務は「利用が少なく鉄道の特性を発揮できなくなっている線区は、地域の理解を得ながら、より効率的な交通サービスのあり方を検討したい」と強調した。
合わせて発表した15年4~9月期の連結売上高は前年同期比1%減の850億円。新幹線の工事が一段落し、関連するグループ会社の売り上げが減った。運輸収入は前年同期を上回った。運休していた特急列車の利用再開や、外国人観光客の利用増が寄与している。
営業損益は安全確保のための修繕費と新幹線開業準備の経費などが増え赤字幅が拡大したが、純利益は1%増の136億円だった。国鉄民営化時に国から受けた経営安定基金の運用で購入した外国債券や株式の売却を積極的に進めた。
9月末の現金・現金同等物の残高は284億円と1年前から81億円減少した。小山常務は「安全投資が増えている。国から追加支援を頂いたが、キャッシュは現状でも厳しい」と話した。
16年3月期の通期予想は上方修正した。外国人観光客の利用増などを背景に、売上高は15年3月期比2%減の1715億円と従来予想(1710億円)を5億円上回ると見込む。営業損益は420億円の赤字と従来予想(445億円の赤字)よりは赤字幅が縮小する。原油安がディーゼル車の経費を押し下げる。
それでも、収益改善にはほど遠く、島田修社長は「厳しい見通しだ」とのコメントを出した。今回、赤字10線区の収支状況を初めて公表したことで、改善策の議論がこれまで以上に進みそうだ。