財務省が10日発表した2015年度上半期(4~9月)の国際収支状況(速報)によると、モノやサービスなど海外との総合的な取引状況を表す経常収支は8兆6938億円の黒字だった。黒字額は前年同期(2兆8億円)と比べて大幅に増え、4~9月としては5年ぶりの高水準だった。原油をはじめとする資源価格の下落で輸入額が減ったうえ、旅行収支が黒字になった。企業が海外の子会社や投資先から受け取る第1次所得収支も、円安を背景に85年以降で過去最大になった。
欧米向けの自動車輸出が伸び、輸出額が37兆2189億円と、前年同期に比べて1億177億円(2.8%)増えた。一方、原油安で輸入額は37兆6386億円と、3億193億円(7.4%)減った。第1次所得収支の黒字は1兆6605億円(18.1%)増の10兆8342億円となった。
サービス収支の赤字額は7976億円(前年同期は1兆8025億円)だった。統計上でさかのぼれる1996年以降で赤字幅は最小になった。旅行収支の黒字や特許収入が拡大した。旅行収支は1996年以来赤字が続いていたが、訪日客の急増によって上半期は6085億円の黒字になった。自動車などを海外生産した際に得られるロイヤルティー収入も最大だった。
財務省は今後について、中国経済の減速や原油価格の動向が貿易収支や旅行収支に与える影響を注視したいとしている。
同時に発表した9月の経常収支は1兆4684億円の黒字(前年同月は9780億円の黒字)と、15カ月連続で黒字だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(2兆2273億円の黒字)を下回った。貿易収支は823億円の黒字(同7112億円の赤字)、第1次所得収支は1兆6694億円の黒字(同2億393億円の黒字)だった。〔日経QUICKニュース(NQN)〕