朝日を浴びるジュエリーアイス(2月9日、豊頃町提供)
太平洋に注ぐ十勝川の河口にある豊頃町が今冬、一躍注目を浴びた。厳冬期に海岸に打ち上げられる氷「ジュエリーアイス」が国内外のメディアに取り上げられ、ツアー企画も始まった。町は来シーズンから官民を挙げて売り込みをかけるつもりだ。
零下10度を下回った2月中旬の早朝、河口近くの大津海岸に6台の乗用車が止まっていた。ナンバーは札幌や旭川、釧路などで、カメラや三脚を手にするグループも。朝日を浴びたジュエリーアイスを楽しもうという人々だ。腰を下ろして撮影したり、手にとって透かして見たりしながら、「きれいだね」と感嘆の声が漏れた。帯広市の30代女性は「つい引き込まれて、ずっと見てしまう」。海岸に寝そべり、スマートフォンでジュエリーアイスと「自撮り」した男性は「いい記念になりました」と満足そうだった。
ジュエリーアイスとは、1月から2月にかけて十勝川の氷が太平洋に下り、波で海岸に打ち寄せられたものだ。透明度が高く、光の当たる角度によって色の違いも楽しめる。冬の大津海岸は厳しい寒風にさらされ、海岸に近づく人が少なかったこともあり、広くは知られていなかった。
豊頃町は漁業や農畜産業が中心だ。これまで目立った観光資源はなかったが、2014年から町のホームページでジュエリーアイスの発信を始めた。今年1月に週刊現代が「絶景日本遺産」として紹介。同月に町が観光業者向けのモニターツアーを開いたところ、40人程度を見込んでいた参加者が70人を超えた。さらに米紙ニューヨーク・タイムズの電子版も「ダイヤモンドのように輝く氷が日本の海岸に打ち寄せる」と大きく紹介した。
札幌市の観光バス運行会社「北海道オプショナルツアーズ」は2月、ジュエリーアイス見学を組み込んだ初のツアーを企画した。45人の定員は売り出し初日に埋まったという。同社の永山茂・経営企画部長(57)は「流氷とは違う透明感はほかの場所にはないもので、ツアー客たちも感激していた」と手応えを語る。
豊頃町商工会のまちづくり委員…