長崎地裁は10日、国営諫早湾干拓事業(長崎県)の開門調査差し止めを命じた同地裁の仮処分決定に対する国の異議を退ける決定を出した。国は2010年の福岡高裁確定判決で開門を命じられている。差し止めの仮処分決定が維持されたことで、国は相反する義務を負う現状が続く。農林水産省は決定を不服とし、福岡高裁に抗告した。
決定理由で松葉佐隆之裁判長は「開門すれば農地の塩害、潮風害、水源の一部消失など、営農者の生活基盤に関わる重大な被害が生じる可能性がある。国が事前に実施するとしている対策工事の実効性にも疑問がある」と指摘。さらに「開門しても漁業環境が改善する可能性は高くない」との判断を示した。
審理で国側に補助参加した開門派の漁業者らは、開門によって諫早湾や有明海の漁場環境が改善すると主張したが、地裁は認めなかった。
開門調査は、潮受け堤防排水門を5年間にわたり開放し、干拓事業と有明海の漁業不振との因果関係を調べる目的。福岡高裁判決が命じ、当時の民主党政権が上告せず、開門が確定した。
営農者側は開門差し止めを求めて提訴し、長崎地裁は訴訟の判決に先立ち差し止めの仮処分決定を出していた。訴訟は既に結審している。〔共同〕