筋力などの発達が遅れる難病「先天性ミオパチー」だった長女(当時3)に十分な栄養を与えず衰弱死させたとして、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親(20)の裁判員裁判の判決公判が30日、大阪地裁であった。小倉哲浩裁判長は「母親が長女の栄養不良を認識していたというには合理的な疑いが残る」として無罪(求刑懲役6年)を言い渡した。
公判では▽長女の死因▽長女の健康状態に対する母親の認識――の2点が争われた。
小倉裁判長は判決理由で、長女が栄養不良状態だったことを根拠付ける事情が多数認められるとして「死因は低栄養に基づく衰弱死と考えるのが合理的」と検察側の主張を認めた。
一方、母親が長女の栄養不足を認識していたことを示す証拠として検察側が挙げた、長女が盗み食いなどをしていたという出来事だけでは「母親の認識を推認するのに限界がある」と指摘した。
死亡までの8カ月間で長女の体重が約11キロから約8キロに減るなど「母親ならば長女の健康状態に十分留意し、栄養不良状態と気づくべきだった」としつつ、親族から健康上の問題を指摘されたことはなく「正確に認識しにくい面があったことは否定できない」と弁護側の主張を認めた。
母親は未成年だった昨年4月以降、夫で長女の養父(23)=同罪で起訴=と共謀、長女に十分な食事を与えず、同6月中旬に大阪府茨木市の自宅で衰弱死させたとして起訴されていた。
大阪地検の北川健太郎次席検事の話 判決内容を精査し、適切に対応する。