2012年12月に起きた山梨県の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故で死亡した9人のうち5人の遺族12人が、トンネルを管理する中日本高速道路(名古屋市)と点検業務を担当していた子会社に計約9億1200万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁(市村弘裁判長)は22日、判決を言い渡す。
同じ遺族や負傷者が中日本高速の当時の社長らに賠償を求めた訴訟もあるが、判決は初めて。全国のインフラの老朽化対策に影響を与えた事故で、維持管理や点検をめぐる責任を裁判所がどう判断するかが焦点。
提訴は13年。遺族側は、中日本高速と子会社「中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京」が(1)1977年の供用開始以降、老朽化が進んだのに天井板の改修工事をしなかった(2)米国で同種の事故が起きていた――として「事故発生を予測できた」と指摘。
また事故前の12年9月の点検について「天井板のつり金具を固定するトンネル最頂部のアンカーボルトを打音検査するか近接目視で点検していれば、事故は防げた」として、結果回避義務違反を主張した。
一方、中日本高速側は天井板が崩落した事実から、過失はなくても、工作物の欠陥で与えた損害を賠償する「工作物責任」を認めている。しかし、事故は予測できず、点検方法との因果関係はないと反論した。
原告は、東京の同じシェアハウスに住んでいた犠牲者5人の両親ら。石川友梨さん(当時28)の父、信一さん(66)は「責任の所在の明確化、原因究明と再発防止を目的に提訴した。中日本高速は裁判外で示談を持ち出したことがあるが、私たちはお金が欲しいのではない」と話している。〔共同〕