北朝鮮が6日、4度目となる核実験で同国初の水爆実験を行ったと発表し、関係者の間に衝撃が広がった。核削減を求める声に背を向け、国際社会で孤立を深める北朝鮮の姿勢に、被爆者団体や拉致被害者家族らからは改めて怒りと不信の声が上がった。関連省庁や自治体も確認作業など対応に追われた。
「非常に恐ろしいことだ。水爆は広島に投下された原爆とは比較にならないほどの威力を持っており、使われれば1都市の破壊ではすまないだろう」。広島県原爆被害者団体協議会の清水弘士事務局長(73)は6日午後、北朝鮮の発表を受けて語気を強めた。「シリア問題などで揺れる世界情勢の不安定化が加速し、核保有国などの軍拡競争が進むことを憂慮している」と話す。
自身は3歳で爆心地から1.6キロの地点で被爆した。「再び被爆者を出してはならない。核廃絶に向けた流れを作ろうと訴え続けているのに大変残念だ」と強調した。
長崎原爆被災者協議会(長崎市)の谷口稜曄(すみてる)会長(86)も「長崎は最後の被爆地でなければならないと廃絶に向けた活動を続けてきた。核実験は許すことはできない」と話した。
北朝鮮による拉致被害者の家族も憤りを隠さない。日朝両政府は2014年5月、拉致被害者らの再調査で合意。日本政府は独自制裁の一部を解除したが、北朝鮮が「1年をめど」としていた調査結果はいまも出ていない。横田めぐみさん(失踪当時13)の父、滋さん(83)は「再調査の結果の報告もない状態でこうした不穏な動きが出ると、不信感が増す」と話した。
有本恵子さん(同23)の母、嘉代子さん(90)は「(北朝鮮は)やはり何をするか分からない」と肩を落とした。「なぜ軍事力より人々の生活にお金を使おうとしないのか」といい、「冷静な判断をするように各国が協力して働きかけてほしい」と訴えた。
政府や自治体も対応に追われた。警視庁は北朝鮮関連施設への抗議活動などに備えるために、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の施設などの警備を強化するよう、各警察署や警備にあたる部隊に指示した。警察庁も対策本部を設置、情報収集を急ぐ。
北朝鮮と日本海を挟んで向き合う新潟県。危機対策課の担当者は「テレビの速報以外の情報はつかめていない」と困惑気味。県は空気中のちりを収集して放射性物質を計測する装置を県内6カ所で起動させる準備を始めた。モニタリングポストによる放射線量の監視も強化するという。
秋田県も総合防災課の担当者らがテレビのニュースを見たり、庁外に出ている職員にメール連絡を入れたりした。県内6カ所で空間放射線量を計測しており、数値の異常などにも注意を払っているという。