安倍晋三首相は22日午後、第190通常国会の衆院本会議で施政方針演説に臨んだ。首相は一億総活躍社会や経済、地方創生や外交を柱に課題に取り組む姿勢を提示。非正規労働者の待遇を改善する「同一労働同一賃金」の実現を目指し、格差是正を進める考えを訴える。
首相は「世界経済の不透明感が増している。これまで力強く成長をけん引してきた新興国経済に弱さがみられる」と指摘。低コストなどを背景に21世紀以降、新興国への投資が拡大した点に触れつつ「『より安く』を追い求める、デフレ型の経済成長には、おのずと限界がある」と指摘し、イノベーション(技術革新)で付加価値を生み出して持続的成長を確保する必要性を強調する。
環太平洋経済連携協定(TPP)に関しては「2年半にわたる粘り強い交渉によって、国益にかなう最善の結果を得られた」とし、国内対策を講じて「攻めの農業」を支援する方針を掲げる。地方創生を巡っては、税収が上振れした成果に触れつつ「この果実を全国津々浦々にお届けする」とし、訪日客拡大の恩恵などを一段と波及させる方針も示す。
一億総活躍社会に関しては「1人ひとりの事情に応じた、多様な働き方が可能な社会への変革。そして、ワーク・ライフ・バランスの確保」が重要課題だと述べる。フレックスタイム制度の拡充や時間外労働への割増賃金の引き上げ、「マタハラ」の防止措置を義務付ける方針などを提示。さらに今年まとめる「ニッポン一億総活躍プラン」で「同一労働同一賃金の実現に踏み込む考え」も示す。
アベノミクスの新3本の矢で掲げる「介護離職ゼロ」の目標に向けて、在宅介護の負担軽減のため2020年代初頭までに介護の受け皿を50万人分整備すると訴える。施策を総動員し、今後25万人の介護人材を確保する方針も示す。「希望出生率1.8」を実現させるため、子育て支援強化策として「17年度末までに50万人分の保育の受け皿を整備していく」と表明する。
また名目国内総生産(GDP)600兆円の目標に向けて「成長と分配の好循環」を目指すとする。法人実効税率を16年度から20%台に引き下げる点を踏まえ「経済の好循環によって内需を押し上げていく」と説明。イノベーションがカギを握るとし、人工知能やロボット、IoT(モノのインターネット化)の研究支援や規制改革などで新たな可能性を開くと強調する。2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標を堅持する方針も掲げる。
外交面では日米同盟が基軸とし、積極的な平和外交や経済外交を展開する方針を示す。中国とは「戦略的互恵関係の原則の下、関係改善の流れを一層強化する」と訴える。〔日経QUICKニュース(NQN)〕