【パリ=竹内康雄】ポルトガル大統領選が24日投開票され、選挙管理委員会によると、中道右派の野党、社会民主党の元党首のマルセロ・レベロデソウザ氏(67)が約52%を得票して当選した。レベロデソウザ氏は各党間の融和を訴えてきた。当面は、緊縮財政に批判的なコスタ首相が率いる左派系内閣との協調路線をとるとみられる。
3月9日に就任する。ポルトガル大統領選は2回投票制だが、レベロデソウザ氏が1回目の投票で50%超の票を得たため、決選投票を待たずに当選が決まった。投票を棄権した有権者は約51%だった。
レベロデソウザ氏は大学教授やコメンテーターを務める。同氏は選挙戦で「私はどの党の大統領にもならない」と、中立で各党の融和を進める立場を取ると訴えていた。左派は複数の立候補者がいたため、足並みがそろわなかった。
ポルトガルでは2015年10月の総選挙で、同国の財政危機以降の経済立て直しを進めてきた社会民主党のコエリョ前首相が、いったんは内閣を発足させたが、経済政策を否決されて退陣。現職のカバコシルバ大統領は最大野党の社会党のコスタ党首を首相に指名した。
コスタ首相は就任後、コエリョ氏が敷いた緊縮財政路線を終了させると宣言。一方で「一定の財政規律は尊重する」とも述べ、積極財政には転じず、財政に配慮する考えを示した。
左派内閣の誕生で金融市場では改革路線が後退するとの見方などから、同国10年債利回りは6カ月ぶりの水準に上昇(価格は下落)している。大統領選で中道右派のレベロデソウザ氏が勝ったのは「大統領は右派で、首相は左派にするという有権者のバランス感覚が働いた」(欧州系証券)とみられる。
ポルトガルの大統領は国家元首で、任期は5年で2選まで可能。軍の統帥権や首相の任免権のほか、議会を解散したり、法案を拒否したりできる。平時は首相が中心に政権運営するが、危機時には大統領が重要な役割を果たす。前任のカバコシルバ大統領は06年3月に就任し、2期務めた。金融危機時には政権を立て直すなど指導力を発揮した。