中国電力は29日、清水希茂副社長(63)が社長に昇格する人事を発表した。4月1日付で就任する。苅田知英社長(67)は代表権を持つ会長に就き、山下隆会長(72)は相談役に退く。中国電の社長が交代するのは5年ぶり。4月からの電力小売りの完全自由化を控え、新経営体制への切り替えを前倒しした。自由化の波の中、新体制での創意工夫が試される。
電力会社にとって喫緊の課題が4月1日からの電力自由化だ。中国電のこれまでの社長交代は6月下旬の株主総会時に実施する場合がほとんどだったが、自由化を控えて、社長交代の時期を早めた。新電力や異業種が参入するなか、イズミなど地域企業と提携したポイントサービスの導入や新たな料金メニューの設定などで顧客の囲い込みを強化している。清水氏は「環境の変化に柔軟に対応し、電気販売量を保っていく」と話した。
地元企業との提携などはいわば守りの策。成長のため、今後は地域外での展開が必要だ。20日には三井物産と共同でマレーシアの発電事業への参入も表明した。他地域での電力小売りも検討する。「地域で選ばれ、地域を越えて成長するグループを目指す」と話す。
進捗が滞っている島根原子力発電所(松江市)の再稼働への対応も課題だ。清水氏は技術者出身で、島根原発の運営、地域対応などの責任者として現地に駐在した経験もある。11年に副社長に就任、13年からは電源事業本部長も務め、発電所全体の運営、安全対策などを統括してきた。
ただ、島根原発では昨年6月末に点検記録偽造問題が発覚。苅田社長や清水氏を含む役員4人が報酬の一部を返上しており、立地自治体や住民からの不信感も根強い。清水氏は「不適切な事態への対応の中、地域の人々の信頼なくして原発はあり得ないという教訓を得た。それを胸に、今後の業務を推進していきたい」と話した。
コンプライアンスや人材育成担当の経験もあり、経営全般に関しても幅広い経験を積んでいる。苅田社長は「総合的な意味で後継者としてふさわしいと判断した。新社長を支援し、地域活性化に貢献していく」と話した。山下会長は「現場からの信頼も厚く、強いリーダーシップ持っている」と評価する。