日本三景の一つ、特別名勝・松島(宮城県)で病気や害虫による松枯れ被害が深刻化している。東日本大震災の津波で木が衰弱し、復興事業の人手不足で防除が手薄になったことも影響したとみられる。県は、松島に特化した異例の追加対策費として、約7800万円を2015年度補正予算に計上した。
県は「松島の景観が損なわれれば、宮城観光に大打撃だ」と危機感を強調。1月から、弱った木を伐採したり、虫害を予防する薬を木に直接注入したりといった被害の拡大防止策に着手した。
森林整備課によると、松くい虫による被害量は震災前の10年度に3200立方メートル、11年度は1500立方メートルと減少傾向だったが、12年度は5600立方メートル、13年度は8200立方メートルと急激に増加。14年度は7440立方メートルだが、依然として高水準だ。
津波で塩水をかぶった影響のほか、ヘリコプターを津波で失い、空から殺虫剤を散布できなくなったり、防除に割く担当者の人手が減ったりしたのが要因とみられる。
15年度当初予算では、県全域の森林の病害虫対策に2億6千万円を計上。しかし「夏の少雨と猛暑で木が弱り、害虫の活動も活発で、被害規模が想定より大きいと見込まれる」(森林整備課)ため、松島に限った異例の追加対策を決めた。
県によると、14年に松島観光の中心地、松島海岸を訪れたのは約293万人。沿岸部での観光振興は、復興のけん引役として期待されている。〔共同〕