関西の4政令指定都市の2015年の国勢調査速報が22日出そろった。大阪市は前回調査の10年比で1.0%増えたものの、神戸市が0.4%減、堺市が0.25%減となった。神戸市は20年ぶり、堺市は15年ぶりにマイナスに転じた。京都市は0.04%増にとどまった。東京五輪を控えて人口集中が進む首都圏との違いが鮮明になった。
神戸市は政令市の人口上位10市の中で唯一の減少となり、順位も後退した。5.1%と急増した福岡市に抜かれ、前回5位から6位になった。京都市は川崎市(3.5%増)にも抜かれて6位から8位となった。仙台市も3.5%増えた。
福岡市は起業しやすい環境づくりやIT(情報技術)関連などの企業誘致で、九州の若年層の働く場となっている。川崎市は東京のベッドタウンとして駅周辺の再開発事業などに伴うマンション建設が目立った。
一方、神戸市の人口減少の大きな要因は若年層の転出超過だ。就職世代を中心に年間2500人程度が東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に転出している。堺市は少子化による自然減に加え、住民基本台帳ベースでも13年から転出超過となっている。「南区の公営住宅の建て替えで一時的に転出している影響もある」(堺市企画部)という。
りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「国内の東京一極集中と並行して、域内での一極集中が進んでいる。九州で福岡市、東海で名古屋市という人の流れが強まり、関西でも大阪市に集まる傾向がみられる。首都圏の政令市の増加は東京の求心力が波及している」と分析する。
京都市は11年から5年連続で転入超過となっている一方で、1人の女性が生涯に産む子供の平均数である「合計特殊出生率」が全国平均を大きく下回り、人口の伸びが小さかった。大阪市は中心部で高層マンションが増え、自然減を転入超過による社会増が上回った。神戸市や京都市、堺市、東大阪市からの転入超過が目立ち、14年は4市で2千人を超えた。
関西の各政令市は従来の人口減への対策を見直す必要に迫られているといえる。神戸市は15年度にIT関連の起業を支援する事業を始め、若年層の呼び込みや引き留めに乗り出した。久元喜造市長は「神戸らしいまちの魅力やブランド力に磨きをかけたい」とし、洗練された街のたたずまいを移住促進に活用する考えだ。
堺市の竹山修身市長は「子育て支援や企業誘致に力を入れ、転入超過による社会増をめざす」としている。
国内の人口減少が進むなかで、縮むパイを奪い合うのではなく、出生率向上に取り組むべきだとの意見もある。大阪市は16年度予算案で5歳児の教育費無償化に25億2千万円を計上するなど、子育て・教育環境の充実に力を入れる。京都市は14年度から2年連続で達成した待機児童「ゼロ」を今後も維持するため、保育所の増改築などで、受け入れ枠を18年4月までに767人分増やす計画だ。