16日未明に熊本地方を震源とする強い地震が発生したことを受け、安倍晋三首相や関係閣僚が午前3時過ぎから首相官邸に緊急参集して情報収集にあたった。政府は熊本県からの要請を受け、被災地に派遣する自衛隊を2万人規模にするなど態勢を大幅に強化。首相は同日予定していた熊本視察を中止し、17日に予定していた衆院北海道5区補選への応援演説の見送りも決めた。
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首相は午前3時半前に官邸に入った。記者団には「被害状況が広範にわたっている可能性もあり、被害状況の把握に全力を挙げること、救助・救命に全力で当たっていくこと、情報を正確に国民に伝えていくこと、その指示を出した」と述べた。菅義偉官房長官は午前3時半過ぎに記者会見し「閉じ込め、生き埋め、土砂崩れ、道路崩壊など各地で甚大な被害が発生している模様だ」と説明した。
政府はその後、首相による熊本視察の中止を発表。午前5時過ぎに地震非常災害対策本部会議を開き、首相は災害応急対策に総力を結集するよう指示した。菅氏は対策本部会議後の記者会見で政府が把握している被害状況を説明。首相の視察を中止した理由について「こちらで指揮にあたってもらうのが最善だという判断をした」と語った。
熊本県の蒲島郁夫知事は16日未明、政府に「被害が熊本市から天草、阿蘇に拡大している。広域緊急援助隊の規模を3倍程度に拡大してほしい」などと要請。これを受け政府は自衛隊を最終的には2万人規模に、警察、消防についても態勢の増強を決めた。
政府は午前11時半から再び対策本部会議を開き、首相は、倒壊した建物に取り残された被災者の救出を急ぐことや安全な避難先の確保や食料・毛布などの物資の提供に万全を期すよう指示した。また、中谷元・防衛相は会議後、米国からの支援提供について、「米軍の支援は非常にありがたい。検討するように指示した」と記者団に話した。
自民、公明両党は地震対策本部を16日朝にそれぞれ開いた。その後、自民の谷垣禎一幹事長は、公明の井上義久幹事長と自民党本部で会談し、衆院北海道5区補選への首相の遊説を中止する方針を伝えた。両氏は、週明けの環太平洋経済連携協定(TPP)の承認を審議する衆院特別委員会などの国会審議は予定通り行うことで一致。公明は17日から予定していた参院選向けの遊説延期を発表した。