愛甲猛さん
■私の考え 賭博問題
ロッテ時代、「黒い霧」事件の時に西鉄にいた稲尾和久監督が、ミーティングで口にした言葉を今でも覚えている。「競馬も競輪もオートレースもやっていい。ただ、野球賭博だけは関わるな」と。
自分も色々と遊んだが、その教えはかたくなに守った。違法である野球賭博で得られたお金が裏社会に流れるのは、誰もが知っていること。野球で飯を食わせてもらっている選手が野球を冒瀆(ぼうとく)してはいけない。
昔は先輩から「一流の選手は一流のところで遊べ」と言われた。裏社会にも、選手を食い物にするようなことはしない風潮があった。覚醒剤事件の清原和博被告は、昔なら暴力団の幹部から怒られていただろう。
野球選手と暴力団の関係が変わったのかも知れない。バブル経済以降、裏社会も、どこからでも金を稼がなければいけなくなった。スポーツ選手はその対象として目をつけられやすい存在ではないか。
野球協約では賭博行為について、1年間、または無期の失格処分としているが、もっと厳しい処分が必要だと思う。例えば、選手は契約金を返還しなければならないとか、球団への制裁金も、今回のような1千万円といったレベルではなく億単位の金額を科す、など。そこまでリスクを冒してやるのは馬鹿らしい、と思うようなルールを野球界が決めた方がいい。(構成・中小路徹)
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あいこう・たけし 横浜高投手として、1980年の全国高校野球選手権で優勝。プロ野球ではロッテ、中日に在籍。現在は俳優、実業家としても活動。球界の裏側を描いた著書がある。