ハンセン病特別法廷問題について会見する最高裁の今崎幸彦事務総長=25日午後、東京都千代田区、白井伸洋撮影
かつてハンセン病患者の刑事裁判などを隔離された療養施設などに設けた「特別法廷」で開いていた問題で、最高裁は25日、調査報告書を公表した。「社会の偏見や差別の助長につながった。患者の人格と尊厳を傷つけたことを深く反省し、お詫(わ)びする」と謝罪した。その一方で、憲法が保障する「法の下の平等」や「裁判の公開原則」に違反するとは認めなかった。
ハンセン病特別法廷、最高裁が謝罪 「尊厳傷つけた」
最高裁が司法手続き上の判断の誤りを認め、謝罪するのは極めて異例のことだ。ただ、最高裁が調査にあたり設置した有識者委員会(座長=井上英夫・金沢大名誉教授)は「特別法廷は憲法に違反する」と指摘していたにもかかわらず、最高裁として違憲性を認めなかったことには、元患者などから批判が出ている。
最高裁はこの日、司法行政を担う事務総局のトップにあたる今崎幸彦・事務総長が記者会見し、報告書を説明したうえで謝罪した。
当事者がハンセン病患者であることを理由とする特別法廷は、1948~72年に95件開かれた。報告書によると、事務総局はハンセン病患者であれば特別法廷の設置を認める「定型的な運用」をしていた。2001年の熊本地裁判決で「隔離政策の必要性が失われ、違憲は明白だった」とされた60年以降もこうした運用を続けていたという。
報告書はこうした運用について「合理性を欠く差別的な取り扱いだった」と指摘。やむを得ない場合にのみ特別法廷を開けるとした裁判所法の趣旨に違反すると認めた。