米財務省は29日、半年に1度議会に提出する外国為替報告書を公表し、日本、中国、ドイツ、韓国、台湾の5カ国・地域を新たに設けた「監視リスト」に指定した。円高が進む最近の為替相場は「秩序だっている」として、円高を抑えるための為替介入を示唆する日本側を改めて牽制(けんせい)した。
環太平洋経済連携協定(TPP)の合意にあわせ、米議会は今年、自国の輸出に有利になるよう通貨を切り下げる国への対抗措置を盛り込んだ法案を可決。①対米貿易黒字が200億ドル(約2・1兆円)以上②経常黒字が国内総生産(GDP)の3%以上③為替介入の規模がGDPの2%以上――の三つを満たした国に対し、対抗措置を取るよう求める内容で、今回の報告書で初めてその基準が導入された。以前からある「為替操作国」の認定はなかった。
今回はすべての基準を満たした国はなかったものの、日本など5カ国・地域が二つを満たすとして、監視リストに入れた。日本は昨年後半の対米貿易黒字が339億ドル(約3・6兆円)で、中国、ドイツに次いで3番目に大きいという。ただ日本は最近、為替介入をしていないとして、③は適用されなかった。
また報告書は、最近の円相場について、日本側が「極めて荒い」と言及したことに触れたうえで、相場は「秩序だっている」と改めて反論。円高ドル安が進むなか、日本は介入に対して新たな「警告」を出された形で、難しい対応を迫られそうだ。
中国については、急速な人民元安を防ぐため、当局が昨年8月から今年3月に4800億ドル(約51兆円)以上の元買い介入をしたと試算。市場を安定させるため、為替政策の先行きのより明確な説明を求めた。
最近は落ち着きを見せているものの、ここ2年ほどの急速なドル高で米国の輸出の低迷が続く。米大統領選の予備選では不動産王トランプ氏らが日本や中国を「為替操作国」と批判しており、米政府はドル高に神経をとがらせている。(ワシントン=五十嵐大介)