中野晃一・上智大国際教養学部教授=東京・四谷、越田省吾撮影
このシリーズでは、護憲VS.改憲でなく、立憲VS.非立憲という「レンズ」を用いて、日本の現在に目をこらしてみた。(上)では、小選挙区制導入後、数の力で「決められる政治」に突き進んでいく軌跡をたどり、(中)では、経済のグローバル化が、国民の権利を守る立憲主義と衝突する現状を点描した。そして今回、このような現状と問題意識について、2人の識者に語ってもらう。
【上】小選挙区制、憲政の岐路
【中】グローバル企業、法と衝突
■ナショナリズム喚起、世界的潮流に 中野晃一さん
戦後の日本において、立憲主義という言葉は忘れられ、憲法論争はもっぱら、9条を中心に、護憲か改憲かで行われてきました。
ところが、グローバル化の進展とともに、強い指導者が求められ、選挙で選ばれた時の政府が何でも決めていいというような、非立憲的な政治手法が広まった。さらに、安倍政権のもと、改憲勢力が非立憲ないし「壊憲」勢力に変貌(へんぼう)したことで、立憲主義が再び見いだされました。
ただ、立憲主義の危機は日本だけではありません。そもそも近代的な立憲主義は、国を単位として、政治や経済の秩序をつくる中で出てきた考え方です。
それが冷戦後、経済や安全保障のあり方が、国という枠組みを越えてしまったため、憲法秩序が極めて成立しづらい状況になり、非立憲的な政治が世界中に広がっています。米国や西欧で対テロのために市民の人権が制約されるようになっているのもその一例です。