切った髪を手にする寺尾記者
病気やけがなどで髪を失った子どもたちに、本物の髪の毛でつくったウィッグ(かつら)を贈る「ヘアドネーション」が広がっている。5月1日付で大阪に異動するのを前に、山口で3年間伸ばしてきた髪を切り、活動に取り組む団体に寄付した。
シャキ、シャキ、シャキ――ハサミの音とわずかな振動を感じるたび、頭が軽くなる。防府市のヘアドネーションの賛同美容室「のーたす」。背中の真ん中あたりまで伸びていた髪は、あごのラインになった。
「ヘアドネーション(髪の寄付)」は米国で始まったとされ、日本では2009年、大阪市の美容師渡辺貴一さんらが「JHDAC(ジャーダック、Japan Hair Donation&Charity)」を立ち上げ、活動を開始した。
渡辺さんらは独立して店を構える際、「髪のプロフェッショナルとして社会に貢献できないか」と考え、数が少ない子ども用のウィッグの提供を思いついた。数十万円かかるというフルオーダーのウィッグを病気などで髪を失った18歳以下の子どもたちに無償で提供している。
私は3年ほど前、インターネットで海外のヘアドネーションの記事を読んだことをきっかけに、髪を伸ばしてきた。JHDACで作るウィッグには31センチ以上の髪が必要だ。「のーたす」の美容師住田梨花さんには、予定より長く40センチほど切ってもらうことにした。
ヘアドネーションのために伸ばしてきたとはいえ、バッサリ切るのは勇気がいった。でも、鏡に映った別人のような自分を見て、ウィッグをもらった子どもも、新たな気分でおしゃれを楽しんでくれたらいいなと感じた。