「思い出食堂」
思い出、昭和、なつかし……。こんなタイトルを冠して食べ物をテーマにした漫画雑誌が人気です。読み切りで、主にコンビニエンスストアで売られています。世代を超えて読まれていますが、人気の秘訣(ひけつ)はどこにあるのでしょうか?
■創刊から6年、部数倍増
2010年に創刊した「思い出食堂」(少年画報社)は、ほっこりした食がテーマ、複数作家の新作読み切り、コンビニ中心の販売、というスタイルを作り上げた雑誌のひとつだ。編集長の村松淳夫さんは「グルメや大食いではない、しみじみとした子ども時代の原体験につながるような漫画雑誌ができないか、と社内で提案されたのがきっかけ」と話す。
魚乃目三太(うおのめさんた)さん、たかなししずえさんら画風のやさしい作家を中心に起用。十数本の漫画を載せる。毎回、お弁当、ギョーザなど編集部でテーマを設定して作家に依頼する。吉田類さんやなぎら健壱さんの酒場コラムも人気で、創刊号は4万部だったが、8万部まで伸び、別冊号なども出している。3月に発売した最新の27号の特集は「東北、味の旅へ」。東日本大震災から5年を意識した。
読者投稿も多い。テーマにした食について自分の体験が多く寄せられる。鹿児島県さつま町の自営業中村学さん(50)は、創刊当初から買いはじめ全巻がそろう。漫画はほとんど買うことはなかったが、「ノスタルジー的な内容にひかれた。昔、日本中を旅したこともあり、郷土料理の話も楽しい」。福島県白河市の女性(26)は3年ほど前から買い始めた。もともと食漫画は好きだったが、「読んでいて癒やされる。昭和の食べ物も『あ、こういうのあったんだ』とすっと入れる」という。