包括的核実験禁止条約(CTBT)の監視網への拠出で文書を交換する在ウィーン国際機関政府代表部の北野充大使(左)とゼルボ同条約機関準備委員会事務局長=喜田尚撮影
日本政府は、北朝鮮の核実験を念頭に包括的核実験禁止条約(CTBT)の監視網を強化するため、243万ドル(約2億7千500万円)の拠出を決め、23日にウィーンの同条約機構(CTBTO)準備委員会に正式通知した。
CTBTは1996年の国選総会で採択されたが、条約に定められた特定44カ国のうち8カ国が批准せず未発効。一方で、核実験を検知するために設けられる世界約337カ所の監視網の多くはすでに稼働しており、北朝鮮がこれまでに行った5度の核実験で地震波などをとらえている。
新たな拠出のうち164万ドルは、核実験の際に放射性物質を検出する移動式の観測装置に使われる。当初2年間は北日本地域に置かれる予定だ。日本国内には、すでに群馬県高崎市と沖縄県に固定式の観測装置が置かれており、これらとの組み合わせで放射性物質の観測精度を上げる。
昨年9月、北朝鮮の5度目の核実験後に、当時のオバマ米政権の主導でCTBTの早期発効を求める国連安保理決議が採択されたことも拠出のきっかけになったという。
放射性物質の観測は、疑わしい地震波が検知された際に核爆発を裏付ける役割を担うが、キセノンなどの希ガスは半減期が短く、地中から漏れ出すのはごく微量。過去の北朝鮮の核実験で検出されたのは06年と13年の2度だけだ。CTBTOのゼルボ事務局長は23日、「条約が未発効で現場査察ができない現状では、決められた観測地点以外に機動的に配置できる移動式式の装置は非常に重要だ」と話した。(ウィーン=喜田尚)