かつて御園座の劇場ビルの屋上にあった社殿。6月から岩手県内の倉庫で保管される=名古屋錦ロータリークラブ提供
建て替え工事で姿を消した御園座(名古屋市中区栄1丁目)の旧会館(劇場ビル)の屋上にあった小さな社殿。東日本大震災の被災地支援のつながりで、岩手県陸前高田市の神社へ来月、無償で贈られることになった。「バラバラになっている被災地の住民らをつなげるきっかけになれば」。かかわった人たちはそう願っている。
社殿を管理していた朝日神社(名古屋市中区)の宮司武田正典さん(79)によると、社殿は、戦後まもない頃には御園座の敷地内にあり、後に屋上へ移されたという。「商売繁盛のほか、歌舞伎などの興行で訪れた役者らが芸の上達を願ってお参りに来ていた」と振り返る。
現在の社殿は10年ほど前に造られた。高さ180センチ、奥行きと幅は120センチで、総ヒノキ造りで、屋根は銅板で葺(ふ)いてある。
2013年、旧会館の建て替え工事のため取り外された。だが17年完成予定の新ビルには、新たに造られる社殿が置かれることになった。そこで武田さんが「いつか使ってもらえるところが現れるかもしれない」と引き取った。
昨年、武田さんが会員を務める名古屋錦ロータリークラブが、創立20周年を記念した事業を企画した際、社殿を被災地のために活用することを思いつき、提供を申し出た。同クラブ会長で東海岩手県人会会長でもある石井弘子さん(58)が、被災地支援を通じて知り合った陸前高田市の醸造メーカー会長、河野和義さん(71)に相談。社殿を失っていた愛宕神社へ贈ることが決まった。