硫化水素が零下70度というこれまでにない高い温度で電気抵抗がゼロの「超伝導」になっている際の結晶構造を、大阪大などの研究チームが解明した。大気圧下で安定している硫化水素よりも水素原子の割合が多いのが特徴。10日、英科学誌ネイチャー・フィジックス電子版で発表した。
昨年、ドイツの研究チームが硫化水素に超高圧をかけると超伝導状態になることを論文で発表した。阪大の研究チームは、独チームなどと共同で、この状態の結晶構造を大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県)を使って測定した。
硫化水素は大気圧下では硫黄原子1個に対し水素原子2個の割合で安定しているが、超高圧下では硫黄原子1個に水素原子3個の構造に変化。この変化した硫化水素が超伝導になっていた。結晶は硫黄原子が立方体の頂点と中心にある規則的な形をしていた。阪大の栄永茉利特任助教は「明らかになった結晶構造は、より高い温度で超伝導の物質を作るための重要なデータになる」と話す。(今直也)