事件の構図と動き
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏が殺害された事件で、マレーシアの司法当局は2日、北朝鮮国籍のリ・ジョンチョル容疑者(46)を不起訴処分とする方針を固めた。3日にも北朝鮮に強制送還する。捜査対象の北朝鮮人で唯一の逮捕者だった容疑者の送還で、事件の全容解明は遠のく。
特集:金正男氏殺害
「(リ容疑者を)起訴するだけの証拠がそろっていない」。アパンディ司法長官は2日、朝日新聞にこう話し、勾留期限の3日に不起訴処分にする方針を明らかにした。さらに、リ容疑者の労働許可証は先月初旬で期限が切れていたことも判明。リ容疑者は3日に入国管理当局に移され、強制送還される見通しだという。
今回の事件で、捜査当局が関与を疑う容疑者や重要参考人は計10人。ベトナム人とインドネシア人の実行犯の女2人以外の8人は北朝鮮人だが、逮捕できた北朝鮮人はリ容疑者のみだ。リ容疑者の役回りの解明は、全容把握への数少ない糸口だった。
事件では、クアラルンプール国際空港で実行犯の女2人が正男氏に猛毒「VX」を塗りつけて殺害した。その様子を指示役の北朝鮮人の男4人が間近で見届けたとされる。
地元メディアによると、事件当日に指示役の男らが使った車両の名義からリ容疑者の名前が浮かんだ。警察は事件発生から4日後の2月17日、リ容疑者を事件に関与した疑いで逮捕した。ところが、リ容疑者は「車は以前に紛失したものだ」と関与を否定。空港の監視カメラにリ容疑者は映っていなかった。
また、リ容疑者は「実行犯の女…