カンボジアの無農薬栽培のオクラ畑で笑顔を見せる阿古哲史さん。1キロ約380円で、現地産の7倍程度の値段で販売している=昨年3月、阿古さん提供
カンボジアで日本流農業を広めようと、奈良県出身の男性が無農薬野菜の栽培に現地で取り組んでいる。自社栽培品への信頼を高めるため、日本産の高級果物も輸入。「メイド・バイ・ジャパン」と「メイド・イン・ジャパン」の二枚看板で新興市場に挑んでいる。
「質の高い作物を安定して作り、全国どこにでも供給できる日本流で途上国の農業を変えたい」。カンボジアの首都プノンペンで、日焼けした阿古哲史さん(32)は話した。
奈良県葛城市出身。1990年代に国連カンボジア暫定統治機構の特別代表に就いた明石康氏にあこがれ、途上国支援に関心を持った。大学卒業後、求人サイトなどを運営する会社に入社したが、農薬や農業資材の販売店を営む父親が体調を崩し、実家に戻った。農家とつきあい、高齢化や先行きを憂える声を聞く中で、「競争が激化する国内は難しいが、日本の農産物と農業技術はアジアで求められるのではないか」と考えるようになった。