仮設住宅の状況
熊本県などでの一連の地震で、応急仮設住宅を必要とする県内15市町村のうち、10市町村が仮設住宅の建設用地を事前に決めていなかった。各市町村への取材でわかった。東日本大震災後、国は用地の事前選定を求めている。今回、用地の確保が遅れている自治体が出た要因の一つとなったとみられ、避難所生活の長期化にもつながる可能性がある。
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仮設建設に着手したり、建設を検討したりしている15市町村に、用地を事前に選んでいたかどうかを尋ねた。「選定済み」は嘉島(かしま)町や南阿蘇村など5市町村。「未選定」は熊本市や益城(ましき)町、西原村など10市町村だった。このうち、8市町村は地域防災計画で地震の被害想定をしていなかった。
東日本大震災を受け、国土交通省は2012年5月、建設用地の確保を各都道府県に要請。国交省と内閣府は15年3月には「平常時から建設用地の確保に取り組むこと」との通知を出している。熊本県は15年度の地域防災計画で、市町村は「予定地の確保を行っておくもの」としている。
選定していない理由では6市町村が「災害後の住民要望に柔軟に対応するため」とし、7市町村が「未選定」は仮設の着工時期に影響していない、とした。
だが、選定をせず、必要な用地の確保が見通せない自治体もある。
益城町は、地盤が沈下して町有地の適地がなかなか見つからなかった。必要戸数は2千戸だが、着工できているのは約160戸。町の担当者は「着工が早いほど避難者の負担を減らせるが、着工が予定より2週間遅れている。必要戸数を建てるには公有地だけでは足りない」と話す。
御船町も約70戸を着工したが、残り200戸超の用地を探す。
総務省が南海トラフ地震の対象地域を含む全国168市町を抽出した調査(14年公表)では「選定済み」が118市町で7割を占めた。今回の地震を受け、内閣府は全国の選定状況を調べる方針だ。
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福和伸夫・名古屋大減災連携研究センター長の話 今回の被災地の多くは、大都市より仮設用地が見つけやすかっただろう。同規模の地震は全国で起きうるが、都市部だと今回のような対応では立ちゆかない。事前の備えがないと、その場しのぎにならざるを得ない。危機感が乏しい自治体は全国にある。今回を教訓に、国も自治体や住民の防災力を高める努力をよりすべきだ。