オオムギの種子が穂についたまま発芽してしまう「穂発芽」。農家に深刻な損害をもたらすことが多い。
オオムギの種子が発芽するタイミングを制御している遺伝子を岡山大などのグループが発見した。麦芽の製造に適した品種の開発や収穫前に穂についたまま発芽してしまい、被害をもたらす「穂発芽」の防止に役立つ可能性がある。英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ電子版に18日、発表した。
野生のオオムギは夏の高温乾燥に耐えるため、種子が発芽しないよう成熟してから数カ月間「休眠」することが知られている。野生オオムギから生まれた栽培オオムギは、地域や用途により休眠期間に差がある。グループは約5千品種の大麦の休眠期間と遺伝子の関係を調べ、「Qsd1」という遺伝子が休眠期間の長さを制御していることを見いだした。
ビールやウイスキーの原料となる麦芽を作る際には、種子を休眠から覚まして一斉に発芽させることが重要だ。一方、穂発芽を防ぐには、収穫まで休眠させておく必要がある。岡山大資源植物科学研究所の佐藤和広教授は「休眠を制御する仕組みがわかったことで、穂発芽防止や麦芽醸造に適した品種開発が進むと期待できる」と話している。(瀬川茂子)