民進党が今夏の参院選で掲げるマニフェスト(公約)の原案が25日、明らかになった。安倍政権が進めるアベノミクスを批判する立場から、格差是正や暮らしの安定を強調し、消費税率引き上げの2年延期や保育士給与の5万円アップ、被選挙年齢の5歳引き下げなどを盛り込んだ。党内でさらに調整し、6月上旬に最終決定する。
マニフェスト原案では、消費税10%への引き上げを来年4月から2019年4月へ延期すると明記。安倍政権の経済運営について「アベノミクスは失敗。10%に引き上げられる経済状況ではない」と断じ、選挙戦での訴えの柱とする方針だ。
一方で、旧民主や維新時代からの主張との整合性にも配慮し、岡田克也代表が18日の党首討論で掲げた「引き上げ延期の条件」も列挙。行財政改革の実施▽政府が掲げる20年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標の維持▽軽減税率導入の取りやめと「給付付き税額控除」の実現▽社会保障の充実の前倒し実施――の4点を盛り込んだ。
安倍晋三首相が在任中に実現をめざす憲法改正にも反対の姿勢を鮮明にした。岡田氏が党首討論で「憲法9条を当面変える必要はない」と述べたことを踏まえ、「現行憲法の『国民主権』『基本的人権の尊重』『平和主義』の理念は堅持しなければならない」とマニフェストで位置づけた。
マニフェストには安倍政権の経済政策が「格差拡大」を招いたと指摘しつつ、政権の「一億総活躍プラン」への対抗軸を示す狙いから、「格差是正」や「共生」「暮らしの安心」を掲げ、女性や若者向けの政策が多く盛り込まれた。
男女格差のない「女性の力が活(い)きる社会」をつくるため、「男女同一賃金をめざす」と記載。女性国会議員を増やすため、衆院比例区名簿で一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」導入に向けた法改正を公約した。民主党政権時代に実現できなかった選択的夫婦別姓についても、改めて盛り込んだ。
特に待機児童の問題では、すでに国会に法案提出している保育士の給与月5万円増額を明記した。山尾志桜里政調会長は16日の衆院予算委で、政権が保育士給与の引き上げ基準を女性労働者の平均額にしているとし、「男尊女卑政権」と批判。会見では「(安倍政権の)一億総活躍は偽物だ」と強調している。
格差是正に向けては、低年金受給者の年金を年間で最大6万円かさ上げすることや、保険料を延べ10年支払えば年金の受給対象にすることを盛り込んだ。最低賃金の時給1千円以上への引き上げや、年金の安定運用も盛り込んだ。
若者向けの重点政策には、被選挙権年齢の一律5歳引き下げを盛り込んだ。衆院議員と市町村長、地方議員は20歳、参院議員と都道府県知事は25歳から立候補を可能にするとした。
【民進党マニフェストの主な項目】
(子ども・若者)
・保育士らの月給を5万円引き上げる
・返済不要の給付型奨学金創設、貸与型も全額無利子化を目指す
・ひとり親家庭の児童扶養手当を第2子以降1万円に引き上げ、毎月支払いに変更
・立候補できる年齢を衆院選20歳、参院選25歳にそれぞれ5歳引き下げる
(女性)
・男女同一賃金へ法律を制定
・「選択的夫婦別姓」を可能にする法律制定
・女性国会議員を増やすクオータ制のしくみをつくる
(高齢者)
・介護職員の月給を1万円引き上げ、人手不足に対応する
・低年金者の年金を最大年6万円かさ上げ
・年金積立金を安全運用へ切り替える
(労働者)
・長時間労働是正へ、退社から出社まで11時間あけることを義務付け
・非正規と正規の賃金格差、企業に理由の立証責任を負わせる
(改革推進)
・高所得者の所得税率引き上げ、国際的な税逃れ防止などの税制改革
・議員定数削減で身を切る改革
・国家公務員総人件費の2割削減
・2030年代原発ゼロ
(経済・農業)
・消費税の引き上げを2019年4月に延期
・農業者戸別所得補償制度の恒久化
・TPP合意に反対
(憲法)
・安全保障法制の白紙撤回
・未来志向の憲法を国民と構想する
・国民の知る権利と報道の自由を保障