Tetsuo(左)のガスが、Akiraのブラックホールに吸い込まれる様子のイメージ図=東大カブリ数物連携宇宙研究機構提供
ブラックホールから出る超高温のガスの風が、星の誕生を邪魔する仕組みを東京大などのグループが明らかにした。星はガスが冷えて収縮することで生まれるが、高温の風にあたり収縮が起きない場合があるという。研究論文が26日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載された。
研究で観測したのはSF漫画「AKIRA」の登場人物から名付けられた「Akira」と「Tetsuo」と呼ばれる二つの銀河。太陽の数百万~数億倍の質量を持つAkiraのブラックホールが、Tetsuoにあるガスを吸い込む際、新たに別のガスの風が生まれ、Akira内に広がっている。この風が、星が生まれなくなるほど高温であると確認した。
宇宙には、星を誕生させる条件が備わっているのに星が生まれない銀河の存在が知られている。東大カブリ数物連携宇宙研究機構のエドモンド・チャン特任研究員は「星が生まれない銀河のメカニズムの説明となる」としている。
AkiraとTetsuoの名前は「研究に興味を持ってもらえれば」という狙いでチャンさんがつけた。1年半ほど前に二つの銀河を発見した同機構のプロジェクト名も「MaNGA」。プロジェクトが目指す「銀河の地図づくり」を意味する英語の頭文字から名づけられている。(山崎啓介)