JR別府駅の外国人観光客案内所。熊本地震では、県外への移動を希望する多くの外国人観光客の手助けをした=大分県別府市
熊本地震は、好調だった外国人の九州観光にも影を落としている。訪日客に九州に戻ってもらうため、課題の一つが災害時、言葉が通じない外国人にどう対応するかという問題だ。すでに教訓をいかし、対策に動き始めた観光地もある。
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本震後の4月16日夕、JR由布院駅前に1人の英国人男性(52)が立っていた。「ホテルのピックアップを待っている」と話すが、約束の時間を過ぎても車は来ない。日本語の避難情報が流れる中、男性は「いったい何が起こっているのか」と不安げな様子だった。
調査会社サーベイリサーチセンター(東京)は4月21、22の両日、一連の地震で、九州にいた外国人115人に、福岡空港の国際線ターミナルで聞き取り調査をした。3人に1人が「外国人向けの地震避難マニュアルがなく(周囲の)行動が理解できなかった」と回答。「言葉がわからずどこにいけばよいかわからなかった」は2割を超えた。
本震後の4月16日早朝。JR別府駅は、県外に出ようとする外国人客でごったがえした。外国人客らに観光情報を提供する「別府インターナショナルプラザ」のスタッフらが駅の観光案内所を拠点に、こうした人たちを誘導した。
事務局長の稲積京子さんが痛感したのは「マンパワー」の不足だ。地震後、行政と協力して災害時に避難所で外国人をサポートする人材を募り、登録制度をつくった。登録者はすでに60人を超えた。稲積さんは「災害時に動いてくれるボランティアを日頃から育成しておくことが大切だ」。
九州産業大学の千相哲教授(観光学)は観光マップに避難所の場所や緊急時の連絡先を明記するなど、「九州観光を考えている外国人に災害が起きても安心だと思わせるのが大切だ」と訴える。(柴田秀並)