京急線の品川駅内を巡回する警備員(右)=7日夜、東京都港区、恵原弘太郎撮影
駅の利用客による駅員や乗務員への暴力行為が減らない。全国の大手私鉄での発生件数は8年連続で年200件を超えた。駅員は、護身術の訓練や防犯ブザー携帯といった対策に追われ、乗客との接し方に苦心している。
東京メトロ半蔵門線の半蔵門駅で4月中旬の朝、乗客の女性どうしが言い争いになった。駅員が仲裁に入ると、女性の1人が暴れだし、女性の振り払った手が駅員の首を直撃。駅員は首に軽いけがを負った。
メトロの担当者は「突然のことで防御できなかった。興奮しているお客さまにどう向き合い、どう冷静になっていただくか、悩ましい」と語る。
全国の私鉄72社(JRをのぞく)でつくる日本民営鉄道協会によると、2015年度に大手私鉄16社の駅員や乗務員が受けた暴力行為は225件にのぼる。02年度は83件だったが年々増え、08年度以降は200件超が続いている。
鉄道各社からは「日曜夜、終点駅で酔って寝ていた40代の客に声をかけたが聞き入れられず、両脇を抱えたところ急に暴れ、足を蹴られた」「平日夜、駅の券売機の呼び出しブザーを押した20代の客に硬貨を入れ間違っていることを伝えると急に顔を殴られた」などの報告があがっているという。
半数近くは午後10時~終電の時間帯に起き、客の7割は酒を飲んでいた。10代から60代以上まで年代は幅広く、7割が駅のホームか改札で起きていた。きっかけとしては「理由なく突然に」(35%)、「酩酊(めいてい)者に近づいて」(21%)、「迷惑行為を注意して」(13%)、「けんかの仲裁で」(7%)などだった。「理由なく突然に」は13年度が30%、14年度が33%で、じわりと増える傾向にあるという。
民営鉄道協会は、ビアガーデンと忘年会のシーズンを迎える7月と12月、暴力行為は犯罪だとアピールする啓発ポスターを主要駅に掲示するなどしている。
JR旅客6社や公営交通でも暴力行為は相次いでおり、14年度は574件だったという。