太陽光発電設備の工事などをめぐり、架空の外注費を計上して1億2千万円の所得を隠し、約3千万円を脱税するなどしたとして、名古屋地検特捜部は7日、愛知県春日井市の電気設備工事会社「トーワテック」の社長林学容疑者(44)ら3人を法人税法違反などの疑いで逮捕し、発表した。特捜部は同日午後、名古屋国税局と合同で林容疑者の自宅などを家宅捜索した。
他に逮捕されたのは、電気工事業川村秀和(44)=同法違反容疑=、自営業林裕介(31)=証拠隠滅容疑=の両容疑者。
特捜部や関係者によると、林学容疑者は川村容疑者と共謀し、太陽光発電設備の工事などを受注した際、その一部を川村容疑者に外注したように装い、2014年2月期までの3年間で1億2317万円の所得を隠し、3391万円を脱税した疑いがあるという。
また、林裕介容疑者は、同社から外注費の支払いを受けたように装い、虚偽の請求書のデータを国税局に提出した疑いがある。
国税局は14年9月から査察(強制調査)を実施。林学容疑者はこれまでの調べに容疑を否認しているとみられ、知人らは脱税に協力して謝礼を受け取ったことを認めている模様だ。捜査当局は、林学容疑者が指示したとみており、容疑を固めるため、強制捜査に踏み切ったとされる。
信用調査会社などによると、同社は08年設立。ホームセンターやコンビニの新築に伴う電気工事なども手掛ける。売上高は14年2月期で約20億円。震災前の11年2月期の約5億円から約4倍に急増した。太陽光発電設備の工事の受注増が影響したとみられる。
■背景に「特需」、不正相次ぐ
太陽光発電設備をめぐっては、設置業者や関連メーカーが国税当局から所得隠しの指摘を受けたり、脱税容疑で告発されたりするケースが相次いでいる。東日本大震災後、太陽光発電施設の急速な普及により「特需」に沸いたことも背景にあるとみられる。
今年3月には、愛知県の電気工事会社が、未完成設備の経費を別の工事の費用に付け替えた、約1億1千万円の所得隠しが発覚。また、埼玉県の太陽光パネルを支える台をつくる業者も、売り上げを申告せず約5300万円を脱税したとして同月、所得税法違反容疑などで告発されたことが明らかになっている。
資源エネルギー庁によると、太陽光発電は、発電した電気を電力会社に買い取らせる制度が始まった12年度以降、急激に導入が進んだ。名古屋市のある業者は「買い取り価格が高く、当初の約2年は売り上げが2、3倍に伸びた」と振り返る。
相次ぐ不正に、国税局OBの税理士は「特需のもうけを将来の備えに回すため、税金をごまかしたのだろう」と指摘する。