ファッションショーに参加し、記念撮影で笑顔を見せる乳がん経験者や医師たち=19日午後、東京都江東区のがん研有明病院、葛谷晋吾撮影
乳がん経験者によるファッションショーが19日、東京都江東区のがん研有明病院で開かれた。日本乳癌(がん)学会学術総会の市民向けイベントの一環で、昨年に続く2回目。「がんになっても輝きながら人生を歩む」との思いを胸に、ドレスアップした25人が特設ランウェーの上を行き来し、拍手を浴びていた。
乳がんの治療では、乳房を失ったり、脱毛や皮膚の変色が起きたりすることがある。「生きられるのだろうか」という不安に加え、外見の変化で気持ちが沈む人も多いが、ウィッグ(かつら)や下着用のパッド、メイクなどでかなりカバーできるという。この日は、美容ジャーナリストで乳がん経験のある山崎多賀子さん(55)らメイクの専門家たちや、患者の相談に乗った経験のある美容師たちが、ボランティアで協力した。
ショーでは、あえてウィッグを付けずに歩いた女性が喝采を浴びる場面も。ゲストで参加した乳がん経験者のモデル園田マイコさん(47)は歩き方を指導。「堂々と歩く皆さんの姿に、涙が出そうだった。どん底のとき、私も先輩患者の存在は大きかった。周りで見ていた患者さんも、元気を受け取ってくれたらうれしい」と話した。(上野創)
■ウィッグをつけず「ありのままでいい」
参加した女性たちは、レッドカーペットの上で、それぞれの思いを表現した。
埼玉県飯能市のパートの女性(50)は、乳がんの後に卵巣がんが見つかり、治療中だ。髪が抜けているがウィッグをつけずにショーに臨み、ランウェーで帽子をとって喝采を浴びた。
「ありのままでいい。脱毛した姿でショーに出るなんて一生に1回でしょう」
8年半前に乳がんを告げられたときは、脱毛が嫌で、泣きに泣いた。ウィッグをつけても、周りに気づかれるのではないかと不安で、家にこもりがちに。だが、病院で同じ病の友人ができ、気持ちが落ち着いた。髪の毛も戻り、ウォーキングに続いてランニングを始め、東京マラソンを完走するほどになった。
再び脱毛したが、「また生えてくる。期間限定なら楽しもう」と前向きだ。
「悪いことをしたわけじゃない。堂々としていたい。いま苦しんでいる人にも、人目を気にして泣いていたあのときの私にも、大丈夫だよと言ってあげたい」と話した。