昨年7月に上演された「仙台空襲 孫たちへの伝言Ⅵ」の最後の場面=劇団提供
空襲体験記をもとに毎年7月、仙台市戦災復興記念館で上演されてきた演劇が、今年は同館で上演されない。昨年の舞台で「戦争法案反対」などと訴えたことから、館長が「政治的なものは困る」と指摘。劇団が反発したためだ。
仙台空襲のあった7月10日前後に開く市主催の「戦災復興展」と同時期に、同館では2010年から毎年、「仙台空襲 孫たちへの伝言」と題する劇を上演してきた(11年は震災で中止)。
「要(かなめ)プロデュース・劇団仙台」の作品で、昨年は3人の空襲体験で構成。現代の場面で「国会で戦争ができる国づくりが審議されている」などのセリフがあった。最後に「戦争法案反対! 憲法9条を守ろう!」と、シュプレヒコールをあげる演出もあった。
さとう要・劇団代表と鈴木正英館長によると、今年3月に復興展の話をした際、鈴木館長が「政治的なものは困る。シュプレヒコールはまずい」と発言。反発したさとうさん側は、自主公演に切り替えて別会場を予約した。館側は、その後に上演の相談がなかったことから、劇団抜きで7月の復興展の内容を決めた。
鈴木館長は取材に対し、「市の主催行事の一環なので、政治的に中立でなければならない。賛成、反対どちらかに加担するのはまずい」と話す。さとうさんは「空襲の芝居をやるということは反戦を訴え、9条を守ることにほかならない」と反論している。(石橋英昭)