海音寺潮五郎(1901~77)。61年、東京の自宅で。
■文豪の朗読
《海音寺潮五郎が読む「西郷と大久保」 佐伯一麦が聴く》
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伊達政宗の御霊屋がある仙台市の瑞鳳(ずいほう)殿に至る坂の途中に、鹿児島県人七士の墓がある。明治十(一八七七)年の西南戦争に従軍した薩摩軍兵士たちは、国事犯として全国の監獄署に護送され、仙台の監獄署には西郷隆盛の叔父である椎原国幹以下三〇五人が収監された。彼らは自ら願い出て、仙台、塩釜、野蒜(のびる)、雄勝などで開墾や築港工事に従事し、宮城県の開発に大きな役割を果たした。その中の獄中死した者の墓である。小学校の遠足で聞かされて以来、私は鹿児島県人に親しみを抱いてきた。
明治維新のすぐれた書き手であ…