名前が刻まれた「平和の礎」に向かい手を合わせる人たち=23日午前7時5分、沖縄県糸満市、小宮路勝撮影
太平洋戦争末期にあった沖縄戦の犠牲者らを悼む「慰霊の日」の23日、「沖縄全戦没者追悼式」が沖縄県糸満市の平和祈念公園で開かれた。同県の翁長(おなが)雄志(たけし)知事は平和宣言で、女性を殺害した容疑などで元米海兵隊員が逮捕された事件に触れ、基地があるからこそ起こったと指摘。昨年に続き米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対を表明し、日米地位協定の見直しや米海兵隊の削減も求めた。
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沖縄戦での旧日本軍の組織的戦闘は1945年6月23日に終わったとされ、追悼式が開かれた本島南部の糸満市摩文仁(まぶに)は激戦地の一つ。犠牲者らの名を刻んだ「平和の礎(いしじ)」には早朝から多くの人たちが花などを持って訪れ、刻まれた名に手を触れるなどして死を悼んだ。
追悼式は県などが主催。日差しが照りつけるなか、参列者は戦没者に黙禱(もくとう)した。翁長知事は平和宣言で、「戦争の不条理や残酷さが、71年がたった今でも忘れられるものではない」と言明。国土面積の0・6%にすぎない県に国内の米軍専用施設の約74%が集中している現状を説明し、沖縄が過重な負担を強いられている点を強調した。
元米海兵隊員の男が逮捕された事件については、「非人間的で凶悪な事件に対し、県民は大きな衝撃を受け、不安と強い憤りを感じている」と訴えた。
さらに、日米地位協定に事件捜査を阻まれてきた経緯などを念頭に、憲法が保障する自由や平等、人権などが、沖縄でも「等しく保障されているでしょうか」と疑問を投げかけた。
普天間飛行場の辺野古移設を「唯一の解決策」とする政府方針については、昨年に続いて改めて批判。海兵隊削減など米軍基地の整理縮小の実現も求めた。また、未来を担う世代のために恒久平和に取り組んでいく決意を宣言した。
追悼式には、安倍晋三首相や衆参両院議長、キャロライン・ケネディ米駐日大使らが出席した。(岡田玄)
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〈沖縄戦〉 米軍は、太平洋戦争末期の1945年3月に慶良間諸島に、4月に沖縄本島に上陸。日本軍は本土上陸を遅らせる持久作戦をとり、一般住民を巻き込んだ戦闘が続いた。激しい地上戦により、当時の県人口の4分の1にあたる県民が犠牲になったと言われ、日米の軍人も合わせると死者数は20万人以上とされる。