南海トラフ巨大地震と東海地震の想定
政府は28日、南海トラフ巨大地震の予測可能性や観測、評価に基づく防災対応について検討する作業部会を立ち上げた。これまで東海地震の被害想定域を前提にしてきた大規模地震対策特別措置法(大震法)の対象地域や、直前の予知を前提とした運用の見直しなどを検討する。見直されれば、約40年ぶりとなる。
南海トラフ地震の被害想定
大震法は東海地震について直前に予知できる可能性を前提に、対策を講じる目的で1978年につくられた。静岡、愛知、長野の3県27カ所に岩盤の変形を観測するひずみ計を設置して東海地震を予知し、防災対策の強化地域に指定した地域に対して首相が警戒宣言を発令し、地域への流入制限や鉄道の運行停止、銀行業務の一部停止などの対策をとる。
しかし、政府の中央防災会議の調査部会が東日本大震災後の2013年5月、「地震の発生時期を確度高く予測することは、一般的に困難」とする報告書をまとめた。また、最近の研究で、東海地震は南海トラフ巨大地震として、東南海地震、南海地震とともに連動して発生する可能性が指摘されるようになった。
こうした状況から、今回新たにつくる作業部会では、大震法に基づく基本的な計画を、東海地震を対象にした地域から大規模地震が予想される南海トラフ沿いの地域まで広げるかを検討する。また、南海トラフ沿いでの大規模地震の観測や評価を検討したうえで、前兆現象と判断できない場合に事前対策をどうとるべきかを考える。
作業部会は中央防災会議内に設置され、国や自治体、有識者らで議論する。初会合は8~9月に開く予定で、今年度内に提言をまとめる方針だ。(小川崇)
◇
〈東海地震と南海トラフ巨大地震〉 東海地震は静岡県の駿河湾周辺を震源域とするマグニチュード(M)8程度の地震で、政府は死者数は約9200人と想定。また、駿河湾から九州沖に延びる海底の帯状のくぼみ「南海トラフ」では、最大M9レベルの地震が起こる可能性があるとしている。巨大津波などで最大で死者約32万人、約220兆円の経済被害が出ると想定している。