萩本欽一さん(左)と語り合う若者たち。(右から)白木いくみさん、山本幸輝さん、鷲野天音さん=1日、東京都世田谷区、角野貴之撮影 「18歳選挙権」の導入で、人数が多く投票率の高い高齢世代を重視しがちな「シルバー民主主義」は変わるのか。75歳の大学生でコメディアンの欽ちゃん(萩本欽一さん)が、10代の新しい有権者3人と語り合った。 特集:2016参院選 候補者のスタンスは?朝日・東大谷口研究室調査 特集:18歳選挙権 ■「年寄りのために金を使ってくれ」って言うのがいい 山本幸輝(こうき) 福島第一原発事故の避難地域の出身です。失われてしまったコミュニティーを何とかしたい。好きだったお祭りができなくなったのがショックで。 萩本欽一 好きな祭りができないから何とかしたい。こういう人に政治をやってもらいたいな。でかいことをぶち上げる政治家は、だいたいウソだと思うよね。小さいことに気づいて、すぐにできることをやる。本当はこれが政治と思ってる。 白木いくみ 選挙ってあまり関係ないと考えてたんですけど、大学に期日前投票所が置かれ、やらないといけないなって。10代の票は少ないけど、投票することで無関心じゃないって伝えたい。 萩本 18歳から選挙に行くようになった年だって、いずれ日本史の教科書に1行載る。歴史的な、面白いところにいるんだよ。でも、俺も大学で周りに聞いてみたの。みんなわかんないって言うな。 白木 誰を選んだらいいんだろう、わからないというのが率直な感想です。 萩本 大人だってわかってないよ。国政選挙の投票率が50%ぐらいで、特に若者は関心がないといわれる。でも言葉が間違ってる。関心を持つ時間がない。明日何を食うか考えてる人が、誰に投票するか考えない。俺も貧乏してるときは選挙って覚えてないし、有名になったら今度は忙しいもん。誰を選ぶかより明日どう笑わすか。やっと関心を持つ時間を持てるようになった。どんな人に投票したいの? 鷲野天音(あまと) 僕は半径2キロは人がいない愛媛の山奥に住んでいます。英語を使う仕事に就きたい。日本の枠に収まらず、海外に向けても大きなことをしてくれる人がいたら入れたい。 萩本 いいねえ。でもそういう人いる? 料理人は免許をとる。車の運転も。でも政治の世界はわからない。外務大臣がどれだけ外国語しゃべれるのか、とかさ。 山本 顔が見える人がいいかな。周りでは「お世話になってるから入れる」ってよく聞きました。 萩本 古い言葉が出てきたね。大人になると、つきあいや仕事の関係で、得するところに入れる。本当は、自分がある程度生活できたら、周りを見てあの人が幸せになってほしいと願って投票するようになれば、政治は変わるよね。 白木 少数派の意見も採り入れられる政治家がいい。でも、やっぱり数が多い方、高齢者とかに目がいきがちだと思います。 萩本 投票率高いもんね。歴史を変えたいなら、若者も投票して奇跡的な数字を残すことと、「年寄りのために金を使ってくれ」って言うのがいい。我々は「ばかやろう、そう言われたら使わねえよ」って言うよ。「若者に使え」ってやったら、「ふざけんな」って年寄りの投票率また上がっちゃう。数ではかなわないよ。若者の粋なセリフを聞きたいな。 鷲野 友だちの多くは投票に行かないと言います。めんどくさいとか。部活動で忙しいし。 萩本 部活で自分が勝つか負けるか。他人の勝ち負けは後回しが普通だよ。だけど、教科書に載る何百年に一回の機会。やっぱり足跡を残してほしいよね。行かない人も、なぜ行かないのか、言葉を残した方がいい。今なら聞くから。来年はもう誰も聞かないぞ。 山本 若者向けの政策があれば投票する。ないから投票に行かない。だから高齢者向けの政治になる。どうすればいいですか。 萩本 政治家が動けば、って若者らしくないね。とにかく全員で投票に行ってごらん。そうなれば、間違いなく政治家は若者向けに言葉を出すからさ。 白木 長く政治を見てきて、あのときこうやっておけば、と思うことは。 萩本 「選挙に出て」って言われたことがあるの。「政治活動は求めない。でも若者が振り向く」と。ちょっと迷ったよ。そういう人がほかに出るようになったから、出なくてよかったけど。若者は政治に無関心じゃなくて、言葉が届かないと思ってる。これからがあなたたちの出番じゃない。「こういう政治家が出てほしい」ってどんどん言おうよ。きっと届くから。=敬称略(構成・山田史比古、岡雄一郎、前田智) ◇ 萩本欽一 75歳 東京生まれ。66年に坂上二郎とコント55号を結成。「欽ドン!」など数々の人気番組を生んだ。2005年に社会人野球チームを立ち上げて監督に就任。15年に駒沢大学仏教学部に入学し、現在2年生。 ■欽ちゃんと語り合った10代の有権者3人 山本幸輝 18歳 東洋大国際地域学部1年。福島県浪江町出身で、今春から上京して学生生活を送っている。将来は原発事故で被災した故郷に戻り、新たな街づくりに携わりたいと考えている。 白木いくみ 19歳 名古屋市立大人文社会学部2年。自治体行政にどう住民の声を反映させるかに興味があり、名古屋駅前など各地の街づくりを調べている。将来の夢は教師。 鷲野天音 18歳 愛媛県久万高原(くまこうげん)町在住、県立松山東高校3年。「せっかくの18歳選挙権」と10日、全国の高校生に呼びかけ、松山市で「全国高校生未来サミット」を開く。 |
欽ちゃん「投票行ってごらん」 10代と語る民主主義
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