生後1カ月までの子ども向けのゼリー状安定ヨウ素剤のイメージ=日医工提供
内閣府は13日、原発から30キロ圏の全国の自治体に対し、乳幼児向けの安定ヨウ素剤30万人分の配備を始めると発表した。重大事故の際、放射性物質が甲状腺に取り込まれるのを防ぐ目的で、自治体からの配布対象となる3歳未満の乳幼児は約11万5千人。これまでは避難が始まってから薬剤師が粉末をシロップで溶くなどして飲ませる計画だったが、甲状腺被曝(ひばく)の影響が大きい乳幼児の服用が遅くなる課題が指摘されていた。
乳幼児向けのヨウ素剤はゼリー状でイチゴ風味。ミルクやお湯にも溶け、新生児でも飲める。効果は錠剤と同じで、3年間保存できる。飲み込む力が弱まった高齢者らも服用できる。
医薬品メーカーの日医工(富山市)が国から依頼を受けて製造を始めた。国は自治体が必要量を購入できるよう財政支援する。9月に配備を始め、今年度中に終える予定。30キロ圏外の自治体でも希望があれば、来年度以降に配備を検討する。
ヨウ素剤はこれまで、30キロ圏の自治体に錠剤のものが配備されていた。自治体のなかには、5キロ圏の家庭にあらかじめ配っておき、事故時にすぐ飲めるようにしているところもある。ただ、乳幼児は錠剤を飲みにくいため、放射性物質の影響が大きいにもかかわらず、薬剤師の処方を待たざるを得ない状況だった。
配備に合わせ、原子力規制委員会も配布と服用のガイドラインを見直す。(杉本崇)