進化する競技の舞台
リオデジャネイロ五輪の開幕まであと3週間。選手の活躍を支えるのが、競技が行われる環境の進化だ。泳ぎやすく記録の出やすいプール、弾みやすい体操競技の床……。技術の進歩が競技の魅力をアップさせている。
今年5月に東京都多摩市に完成した屋内50メートルプール「AQIT」(アキット)。背泳ぎの入江陵介選手らリオ五輪に4人を送り出すイトマンスイミングスクールの最新鋭の高速プールだ。総工費50億円。
スピードを競う競泳選手にとって、記録の邪魔になるのは、自身や一緒に泳ぐライバルがたてた水流や波だ。国内外のプールを多く見てきた宮下充正・東大名誉教授(身体運動科学)は「選手にとって抵抗になる水流や波をいかに消すかが大事だ」と話す。
まず重要なのが水深。深い方が水流が起きにくく記録が出やすいといわれる。プールの施工も手がけるヤマハ発動機(静岡県)が約10年前に行った実験では、競泳選手並みの速度で引っ張ったマネキンへの抵抗の大きさが、水深1メートルだと、水深2メートル時と比べて約3・4%増えたという。国際水泳連盟も五輪のプールの水深は最低2メートルと定め、3メートルを推奨している。
AQITの設計に関わったイトマンの星野納・強化本部長によると、国内には浅めのプールが多いといい、過去の五輪では深いプールでターン時の感覚の違いなどに戸惑う選手もいたという。AQITの水深は3メートルだ。
波を消す工夫も重要だ。AQI…