個人名が塗りつぶされ、ネット上で公開された領収書=神戸市議会のホームページから
神戸市議会は20日、2015年度の政務活動費の支出に必要な領収書をインターネット上で公開した。昨年発覚した同市議会の不正流用問題を受けた、再発防止策の一つだが、初のネット公開に伴い公開基準を変更。昨年度まで議会事務局での閲覧などでは公開していた発行者の個人名が非公開となった。「透明化が目的のはずが、後退している」との指摘の声が出ている。
神戸市議会では昨年、自民系会派(解散)が架空の調査委託などで政活費を支出したと装い、市議選前の陣中見舞いなどに流用していた問題が発覚。市議会は昨年10月、ネット公開を含む16項目の再発防止策を決めた。
20日午前、初めてネット公開された。だが、昨年度まで議会事務局で閲覧したり、情報公開請求したりした場合には公開されていた個人の領収書の氏名部分が、塗りつぶされた。一方で、昨年度までは全て非公開だった住所は市や区といった一部が開示された。
朝日新聞は情報公開請求で、ネット公開について議論した市議らの非公開会議の議事録を入手。それによると、「請求・開示といった手続きが省略されるため慎重に」「いろんな人が見て炎上する」など個人名公開に否定的な意見が相次ぎ、「情報の拡散性などに鑑みて配慮が必要」などとして基準の変更を決定。15年度分の領収書については個人名を非公開、住所を一部公開とし、統一性を持たせるためとして、ネット上だけでなく閲覧なども同様の扱いにした。
朝日新聞が市議会側に基準変更の理由を尋ねたところ、山本剛司・市議会事務局長は「個人情報保護の観点から一定の配慮が必要ではないかと考えた」と回答した。
神戸学院大法学部の上脇博之教授は「ネット公開の目的は、多数の目に触れることによる再発防止だ。従来開示していた個人名を隠す合理的な理由は見当たらない。個人名も含めて公開してこそ導入の趣旨に沿うはずだ」と指摘する。
■返還額・率とも過去最高
神戸市議会が2015年度、政務活動費として会派や無所属議員に支給したのは総額約3億4565万円だった。約4062万円(11・75%)が返還され、制度開始の01年度(12年度まで政務調査費)以降、返還額・率とも最高となった。20日、市議会が発表した。これまでは08年度が返還額(約1139万円)、返還率(3・4%)とも最高だったが大きく上回った。(金井和之)