乳児の虐待死を防ぐため、厚生労働省は来年度から望まない妊娠をして未婚や貧困に悩む妊婦の支援事業を始める。産科医療機関などに児童福祉司らを配置し、妊娠の段階からケアをする。まずモデル事業として10自治体で取り組むため、来年度予算の概算要求に7800万円を盛り込んだ。
この事業は、児童虐待に対応する児童福祉司や社会福祉士らを妊婦との接点が多い産院や助産所のほか、貧困や家庭内暴力などで支援が必要な母子を受け入れる「母子生活支援施設」に常駐させる計画。妊婦健診や駆け込み出産の対応で望まない妊娠を把握した場合には相談相手となり、乳児院などの施設や生活保護の相談窓口などにつなげる。妊婦が希望すれば、児童相談所と連携して養子縁組に向けた支援も検討する。
厚労省によると、無理心中以外の虐待で亡くなった18歳未満の子どもは2003~13年度で計582人いる。0歳児が256人(44%)と半数近い。
そのうち生後24時間以内は98人(17%)で、加害者の9割は実母。98人は全員、自宅など医療機関以外で生まれ、出産段階で社会との関係が持てていなかった。98人の死因は絞殺以外の窒息が37・8%、出産後の放置が15・3%、絞殺が6・1%だった。
望まない妊娠をした妊婦は行政への相談をためらう傾向もあり、適切な支援体制をつくることが課題となっている。(伊藤舞虹)