女性へのアダルトビデオ(AV)の出演強要や、女子高校生に添い寝や散歩などの接客サービスをさせる「JK(女子高生)ビジネス」で性的被害が相次いでいることを受け、政府は21日、首相官邸で関係府省庁の対策会議を初めて開いた。進学や就職で環境の変化が大きくリスクが高まる4月に向け、3月中に緊急対策を取りまとめる方針だ。
菅義偉官房長官は21日の対策会議で「若年層の女性を狙った性的な暴力の問題は極めて深刻な状況だ」と指摘。「女性活躍」を掲げる安倍政権として、取り締まり強化や相談体制の充実をめざすといい、都会への進学や就職が集中する時期に対策の力点を置く。連立を組む公明党がAV出演強要問題に熱心なことをふまえており、菅氏はあいさつで「公明党から早急な取り組みの必要性の要請を頂いた」と触れた。
内閣府の専門調査会が今月まとめた報告書によると、AV出演強要では2014年から3年間で計25件の相談が警察に寄せられた。民間2団体への聞き取りでは、相談は16年だけで計100件。こうした相談は氷山の一角とみられている。「だまされて出演してしまった」「(出演を断ると)違約金を請求された」などのケースが目立った。
JKビジネスの店舗は東京都内では、15年6月末の132店から16年1月末は174店に増えた(警視庁調べ)。脅されたり、学生証の写しを取られたりして、性的な被害に遭った事例もある。
AVへの出演強要やJKビジネスは、家庭や学校に居場所がなかったり、経済的な困窮に陥ったりしている女性に、事業者がつけ込むケースが目立つ。「やめたら学校に連絡する」などと、被害者を孤立させ、問題の顕在化を妨げている。(岩尾真宏、高橋健次郎)