イスラエルの攻撃をディフェンスする浦田理恵選手(中央)=8日、フューチャーアリーナ
見えなくても「見える」――。そんな脅威の能力を持ったアスリートたちがいます。パラリンピックの独自競技「ゴールボール」の選手たちです。
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ゴールボール女子、初戦引き分け 「次は勝ち点3を」
目が不自由な人たちのために考案された競技で、選手たちは全身の感覚を研ぎ澄ますことで、ボールの軌道を正確に読み取ります。日本女子チーム6人の鍛え上げられたサーチ能力は世界トップクラス。前回のロンドン大会に続く金メダル獲得に向け、リオ大会の予選を戦っています。
■精度は50センチ間隔
8日午後(日本時間9日未明)にあった初戦のイスラエル戦。日本がチームワークでこぼれ球をカバーし、相手の得点を阻むと大きな歓声が上がりました。
「クワイエット・プリーズ!(お静かに)」
興奮気味の観客席に対して審判がコールします。音を頼りに周囲を把握する選手たちにとって雑音は厳禁です。パラリンピックの舞台とあって観客はいつもより多く、ベンチからの指示が聞こえにくい状態でしたが、キャプテンの浦田理恵選手は「こんなすごい会場でプレーできるのがありがたい。ボールの音はしっかり聞こえている」と笑顔を見せました。
ゴールボールは、コートには各チーム3人が入り、ボールを交互に投げ合い得点を競います。選手によって視力や視野が異なるため、全員が目隠しをして完全に見えなくなった状態で戦います。
そんな状態でどうやってボールの位置を把握しているのでしょうか。秘密はボールにあります。中に鈴が入っていて、ボールが動くと音がします。その音や相手の足音、ボールのバウンド音も判断材料になります。
「7!」「4・5!」――。センターを守る浦田選手が何やら数字を叫んでいます。これで、ボールを持った相手の位置を味方に伝えているのです。その精度は50センチ間隔。「4・5」とは幅9メートルのゴールの端から4・5メートルの位置に相手がいるという意味です。
このサーチ能力、浦田選手は「実際に見えているように頭の中にイメージが浮かぶ」と話しています。20歳のときに網膜色素変性症で両目の視力をほぼ失いましたが、それまで見えていたイメージを基にボールの軌道を頭の中で描くことができる、と言います。「ワンバウンド目の音の大きさで、次にどこの位置ではねるかを予測できる」。目は見えなくても、しっかりと「見える」のです。