ボッチャ混合団体(脳性まひ)、オランダ戦でボールを投げる杉村英孝=金川雄策撮影
突然ですが、「ボッチャ」って何だと思いますか?
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青と赤のボールが浮かんだあなた、かなりのパラリンピック通ですね。同僚の記者に尋ねても「坊ちゃん?」「ブッチャー?」といったありさまでした。
それもそのはず、ボッチャはパラリンピックの独自競技です。しかも、全国大会に出る競技者は200人ほどのマイナースポーツ。ただ、コートの上では激しい頭脳戦が繰り広げられ、その奥深さはコンピューターゲームの名作「テトリス」をほうふつとさせます。
■狙うは白のボール
パラリンピック・リオデジャネイロ大会の会場の一つ、カリオカアリーナ。日本の混合団体は10日(日本時間11日)、オランダと初戦を戦いました。日本の選手が白いボールをコートに投げ込みました。これは「ジャックボール」という目標球。簡単に言えば、このジャックに味方のボールをいかに近づけられるかを競う競技です。イタリア語で「ボール」を意味するボッチャは、重度の脳性まひや機能障害がある人のために考案されました。
コートはバドミントンほどの大きさ。先ほど日本が投げたジャックはコート左側の手前にあります。これは、テトリスでいうと最初のブロックの位置決めです。上級者になるほど、その後のゲーム展開を考えながらブロックを配置しますよね。ボッチャも同じです。代表選手ですから当然、やみくもではありません。
■戦術を変えた日本
ジャックの位置は長らくコート中央に置くのが世界の主流でしたが、その戦術を大きく変えたのが日本でした。
2012年のロンドン・パラリンピックの前、世界の強豪と比べて日本は選手個人の技術が劣っていました。海外と同じ土俵で戦っても日本は勝てない。そこでジャックをコートのあちこちに投げ、相手を揺さぶる作戦に出ました。
対戦型のテトリスでも相手が予測不能な積み方をすると身構えますよね。「何をしてくるか分からない日本」。そんなイメージが定着しました。どこにジャックを置いたら相手が嫌がり、日本に有利なのか――。データを蓄積し、勝利を重ねてきました。いまでは多くの国が日本の戦術をまねするようになりました。