リオデジャネイロ・パラリンピックで女子400メートルメドレーリレーを泳いだ(左から)池愛里、一ノ瀬メイ、成田真由美、森下友紀。4人とも今秋の世界選手権代表に内定した=2016年9月
メキシコ市で今秋に開かれるワールドパラ水泳世界選手権の代表選考会を兼ねた障害者水泳の春季記録会が5日、静岡・富士水泳場で行われた。2000年シドニー五輪競泳代表で「ハギトモ」の愛称で親しまれる萩原智子さん(36)は、障害者水泳を長年見つめ、選手に友人も多い。記録会を観戦した萩原さんに競技の魅力を語ってもらった。
日本水連のアスリート委員長を務める萩原さんは「障害の箇所や度合いはみんな一人一人違う、オンリーワン。その中で、どうやって工夫して泳ぐ技術を編み出し、強くなっていくかの発想力がすごい。その発想力は五輪をめざす選手にも役に立つ」と話す。
記録会では、特に2人の選手の成長に目が留まった。ともにリオデジャネイロ・パラリンピックに出場した19歳の一ノ瀬メイ(近大)と18歳の池(いけ)愛里(あいり)(東京成徳大高)だ。両選手ともリオ大会前にメディアの注目を浴び、萩原さんに「競技力が伴っていないのに注目されることにすごく違和感を覚える」とこぼしたという。それが今回の記録会では、そろって派遣標準記録を突破しての代表入り。「リオパラを経験し、世界で戦いたい思いが強くなった。今は地に足をつけて20年東京大会に向かっていると感じた」と萩原さんは見る。
46歳の成田真由美(横浜サクラ)は会場の記者席にいた萩原さんの姿を見つけ、車いすで近寄ってきた。「ハギトモ、派遣標準(記録を)切ってくるからね」と宣言して、有言実行。「成田さんのような精神力を私が現役時代に持っていたら、もっと強い選手になれただろうなと思う」
自身と障害者水泳の出会いは中学2年の時。のちにシドニー五輪の本番会場となるプールで合宿した時、五輪を目指す一流選手とコースロープを挟んだ同じプールで、障害者や一般の水泳愛好者が泳ぐ光景を目にした。「プール一つがすべての人に開かれている。豪州ではそれが当たり前だった。日本ではどうしてそういう環境がないのか不思議でした」
自らが五輪選手となり、そして現役を引退してから「五輪とパラリンピックの連携」を強く考えるようになった。「体はそれぞれ違うけど、水の抵抗を少なくして速く泳ぎたいという目指す先は同じ。五輪選手がパラリンピックの選手から刺激を受けられる部分もあれば、その逆もある」。お互いが高め合う「オリパラ連携」をさらに進めたいという。
記録会では、成田から中学2年の宇津木美都(みくに)まで、男女の計22選手が世界選手権代表に内定した。標高2千メートルを超えるメキシコ市での大会に備えるため、代表チームは高地合宿も予定している。(平井隆介)