工場見学のイメージ。コースを刷新して4月12日に再開する(サントリーHD提供)
熊本地震から11カ月が過ぎた。サントリー九州熊本工場(熊本県嘉島町)が、4月から人気の工場見学を再開する。熊本に拠点を置く大きな工場では被害が大きく、生産回復に時間がかかっているが、完全復活に向けて一歩進んだ。販売面でもピンチをチャンスに変える戦略で、被災地の復興支援にも協力しながら、売り上げ増を目指す。
工場見学の再開は4月12日。サントリーホールディングス(HD)の広報担当者は「地震から1年以内に再開したいと取り組んできた。熊本でものづくりしている姿を多くの人に見て頂きたい」と話す。工場見学には2015年、約7万6千人が訪れた。今年は、年末までの9カ月弱で7万人の来場を見込む。
再開に合わせて、展示内容も刷新。ビール事業の歴史のコーナーを新設し、「醸造への情熱とこだわり」を伝えるという。ここだけでつくる「阿蘇の天然水」やコーヒー「BOSS」など主要ブランドの展示も新しくする。
ようやく見学再開にこぎ着け一般の人に工場を見てもらえるようになるが、生産の復旧はまだ道半ばだ。工場は昨年4月14日の前震で操業停止。16日の本震でもタンクや配管、天井、ガラスが破損するなど、大きな被害を受けた。復旧作業も、配水管など地下にある設備に時間がかかった。このため主力ビール「ザ・プレミアム・モルツ」の仕込みに取りかかり生産を一部再開できたのは約7カ月後の11月8日。出荷は樽(たる)生が12月13日、缶が今年1月31日になった。16年のビール類出荷量は、前年の2割にとどまった。
復旧完了のめどは見えてきた。缶やペットボトルの製造ラインは4月末の見込みで、ビール類のフル生産は5月から。清涼飲料水は4月に缶コーヒー、5月に天然水を再開し、ウーロン茶などを含めたフル生産は夏ごろを目指す。